ビジネスをスタートして、事業として軌道に乗り発展していくプロセスというのは、「顧客からの信頼・評判を蓄積していく」プロセスでもあります。「売上高」や「経常利益」などのような金額で定量的に測れるようなものとは違い、「顧客からの信頼」「外部からの評判」は目に見えない定量的な測れない尺度であるため、そのコントロールは非常に難しいものになります。しかし、定量的にはかりにくいものであるからといって、対応をおろそかにすることは、事業全体の発展を妨げることになります。
顧客からの評判というのは、一般的には高い評価を得るのには非常に時間や労力がかかります。逆に、悪い評判というのは非常にスピーディに広がっていきます。また、長い時間と労力を費やしながら、高い評判を得ていたにもかかわらず、あるタイミングで顧客から悪い評判を得てしまうと、それを回復するためには、それ以上の労力・時間、コストがかかることになります。場合によっては、事業が継続できないほどのダメージとなるほど評判が下がってしまうということも起こってしまいます。
たとえば、飲食店のようなものの場合に、最初のオープンの段階で試しに入った顧客から「まずい」という評価を得てしまうと、その後、その顧客はリピーターにはなりにくいばかりか、周囲の人たちにも口コミでその評価が広がってしまうことになります。
外部からの「悪い評判」が、提供している商品やサービスなどの品質を正当に評価したものであれば、それは起業家自身の責任によって、改善していく必要があるものです。しかし、現実のビジネスの世界においては、起業家自身にはほとんど問題がないにもかかわらず、さまざまな要因で悪い評判が広がってしまうことがあります。たとえば、
・悪意のある他者(競合他社等)による誹謗中傷・ネガティブキャンペーン
・根拠のないうわさ、風評被害、自社内のゴシップ
・ブラックユーモア、嘲笑的冗談
特に、事業が順調にいきはじめ、会社の社会でのプレゼンスが上がるに従って、顧客や競合他社も増えてきますので、こういった被害も起こりやすくなります。最近では、インターネットの発達によって、さまざまな業界で「比較サイト」や「レイティング」「口コミ情報」「匿名掲示板」等のサイトができていますので、良くも悪くもよりそういった情報が伝播しやすい状況となっています。
起業家自身の責任ではないにもかかわらず形成されてしまっている「悪い評判」については、「広報を通じて見解を発表する」、場合によっては、「警察に対応を依頼する」「発信者に対して訴訟を起こす」などの対応を行う必要があります。このように、自分自身には責任がないにもかかわらず、何らかの「評判」に関しての被害が起こることは、発生しうることであるので、そういった場合の対応方法についても、あらかじめ検討しておくべき事柄といえます。