ここまで、起業する際に必要な「フィージビリティ(事業の実現可能性)の確認」と、ビジネスの方向性を設計するための「ビジネスプランの作成」について考えてきました。しかし、現実のビジネスの世界においては、「すべてがプラン通りに進む」ということはほとんどありません。むしろ、通常は「プラン通りに進まないことのほうが多い」といったほうがよいでしょう。
ビジネスにおける困難が起こった場合に、それが「ちょっとした障害」程度のものではなく、ビジネスの存続そのものにかかわる「危機」と呼べるほどの大きな問題に直面することも起こりうることです。ビジネスが立ち上がって、大きく拡大すればするほど、そういった「危機」の深刻度もより大きなものとなってきます。
ビジネスにおける「危機」は、ビジネスを行っている当事者が事前に予測できなかった要因によって起こるものです。それらを事前に完全に防ぐことはできないにしても、一般的にはどのような要因で起こり、仮に起こってしまった場合にはどのように対処すべきなのか、ということを知っておき、対応を考えておくことで、リスク要因を減らすことは可能になります。
たとえば、ビジネスにおける危機が起こる要因としては次のようなものがあります。
・商品・サービスの品質
・組織内の人的リソースの不足
・競合の発生・知的財産権の侵害
・内部情報の紛失・漏洩
・設備・施設・クリティカルパスの欠損
・経済状況(景気等)
・顧客等の外部からの評判
・自然災害
ビジネスの存続にもかかわるような「深刻な危機」をもたらすこういった要因は、起業家自身がいくら気をつけていたとしても完全に防ぐことはできません。そのため、起業家は「危機」が起こった際には、適切に状況を把握して、その状況に対処する能力を求められることになります。
起業家がビジネスをスタートさせる際、その危機管理までを考えることは少ないといえるかも知れません。しかし、ビジネスの発展とは通常は「困難」や「危機」を乗り越えることによってなされるものですので、こういった問題に対応するための準備は怠りなく最初から行っておくべき事柄といえます。
この章では、「危機」が起こりうる要因や、危機が起こった際のごくごく一般的な対応について考えていくことにします。