アメリカの起業家研修では、ビジネスプラン作成の目的は、「投資家に事業の説明をすること」が前提であることが多いのですが、投資家が「起業家が個人で行っているビジネス」に投資することは通常はありません。投資家が投資をしたいと考えるビジネスとは、優秀なチームによって運営される収益性の高いビジネスです。
ビジネスアイデアに取り立てて新規性がない場合でも、その人物(経営陣)のこれまでの経歴などによって、市場内での信頼がきわめて高く、良質のカスタマーベース(顧客基盤)を持ってビジネスをスタートできるような場合には、ビジネスの立ち上がりのリスクが少なく、かつ収益性も期待できるため、投資家によって投資を受けやすくなります。
特にアメリカでは起業家が事業の発展した後の目標として「事業を売却できるような状態にする」ということを目指すことが多く、そのために事業プロセスの「数値化」「マニュアル化」などを行いながら「システム化」した組織を作っていくことになります。
しかし、事業というのは機械によって無機質に行われるものではなく、その構成員として人間が有機的に関わりながら発展していくものであるため、投資家が事業の評価を行おうとするときには、
「経営陣がどのような人物によって構成されるか」
「事業がどのようなチームによって行われるか」
ということにも強い関心が向けられることになります。投資家によっては、ビジネスプランを読む際、「ビジネスアイデアよりも先に経営陣の経歴を見る」というコメントをする人も多くみられます。
ビジネスプランに記載する経営陣の経歴は、実行しようとするビジネスに関連した信頼性のある実績を記載していくほうがよいとされています。そして、経営陣がどのような役割を持って仕事をしていくのか、の役割分担が明確になっているほうが望ましいでしょう。また、実際に直接的なチームとして参加せずとも、「相談役」などの形で参加してもらえる人がいる場合は、そういったことも記載しておくことになります。
ただ、ビジネスをスタートさせた直後の起業家というのは、最初の段階では人的なリソースも非常に少ないのが普通ですので、これらが完璧に決まっている必要はありません。会社を運営していく上で汎用的に必要なリソースである、「経営の専門家」「経理の専門家」「法律の専門家」などは、むしろ投資家側が人脈やリソースを保有していて、そちらサイドから提供することが可能であることも多いからです。
このため、この部分に関しては、
「今現在の起業家自身が持っている人的リソース」
「将来的な理想的な組織図」
「今現在、不足している人的なリソース」
「不足している人的なリソースを補完していくために望ましいタレント(才能)」
などを正確に理解して、将来の理想的な状態に向けてどのような人材戦略を採用していくか、が分かりやすく記載されていることのほうが重要といえます。