ここまで、ビジネスプランを作成するための「商品・サービスの定義」「市場調査・マーケティング分析」」「顧客獲得・マーケティング戦略」について、簡単に考えてきました。ここまで何度も言及してきたとおり、ビジネスをスタートさせる前に、絶対に確認しておく必要があることとは
「客がいるか?客がいるか?客がいるか?」
です。そして、ビジネスプラン作成のために、ここまで考えてきたことは、「事業を始める前に絶対に考えておいたほうがよい事柄」といえます。その意味では、ビジネスをスタートさせるにあたって、起業家は、「セールスやマーケティングが得意であること」のほうが望ましいといえます。
ビジネスをスタートする際、「セールスやマーケティングが得意」な人のほうが、ビジネスをスムースに立ち上げる可能性が高くなるのですが、「アントレプレナー」として成功するためには、そのような素質だけでは十分ではありません。
先にも述べたとおり、アメリカの起業家研修では、「事業の目標」を「事業を売却可能な状態に発展させる」というところにおいていることが多くなります。
もし、ある起業家がビジネススタートアップに成功したとしても、起業家自身が自分で「セールス」や「マーケティング」を行わなければ成立しないような状態であったとしたら、通常その事業は「売却可能な状態」ではありません。事業立ち上がったとして、それを「売却可能な状態」するためには、事業を「組織化、システム化」しながら発展させていく必要があります。ビジネスプラン作成時には、この「組織化、システム化」のための計画もあらかじめ考えておいたほうがよいでしょう。
事業を「組織化、システム化」していくための起業家の素養としては、
「リーダーシップがあること」
「チームをマネージメントしていくこと」
「財務状態を正しく理解すること」
などといったことが求められるようになります。
「営業が得意」「マーケティングが得意」で、「リーダーシップがある」「高いマネージメント能力がある」、「財務状況を正しく理解可能」というようなことは、一般的には、一人の人格の中で共存はしにくいことです。たとえば、大企業で勤務している人を観察すると、
「営業が得意でも、チームプレイができず、マネージメントはできない」
「財務分析はできるけれども営業には全く向いていない」
「マーケティングのデータには強いが、そのほかのことはできない」
というような「望ましい人格」を共存できない人を多く見かけることでしょう。
「アントレプレナー」はこのような共存しにくい様々な人格を鋭いバランス感覚で立ち回っていくことが求められていくことになります。(「アントレプレナーは芸術家的である」というような表現も起業家向けの文献などでは散見されます。)
そのため、ビジネスプランを作成するにあたっては、「営業・マーケティング」で立ち上げに成功した後の、「オペレーション・テクノロジー・経営戦略」「経営陣・チーム・組織化計画」「財務計画」等についても同時に考えていくことになります。