営業方法・顧客の購買決定プロセス等の特徴







 起業家が新規に市場に参入するとき、需要が十分にありそうなことが確認できたとしても、その商品・サービスの営業活動がどのように行われ、営業活動に接した顧客がどのようなプロセスで購入を決定するか、そしていつお金が自分に支払われるか、ということを事前に理解しておくことは非常に重要です。

 大企業や官公庁などをメインの顧客にするような、専門性が高い商品・サービスでは、どのようなプロセスで営業が進められるのかは特に重要になります。なぜなら、大企業や官公庁を相手にするようなビジネスでは、営業プロセスが非常に長くかかる上に、購入が決定し商品・サービスの提供が完了しても、お金が振り込まれるのが、すべてが完了したはるか先になることも多いからです。
 特に日本の大企業や官公庁では、営業方法・顧客の購買決定のプロセスが複雑になっていること(悪く言えば非合理な尺度)が多く、事前にしっかり調べておかなければならない事柄といえます。アメリカ系のベンチャー企業などが他の国で展開に成功したあと、日本の市場に参入しようとしても、商習慣の違いや日本市場の特殊性が全く理解できず、参入に失敗するケースというのは非常に多くあることです。

 飲食店やレストランのような、比較的一般的なビジネスを行う場合にも、そのプロセスを定義することは重要なことといえます。たとえば、飲食店を始めるとして、その支払いを「食券購入による前払い」にする場合もあれば、「食事がすべて終わってからの後払い」にするような場合もあるでしょう。このプロセスによって、どのような顧客を対象にするビジネスかも変わってきてしまうのです。

 一般的に支払いが早いビジネスは、「汎用的で購入頻度が高く、価格の低いビジネス」で、支払いが遅いビジネスは「購入頻度が低く、価格が高いビジネス」です。起業家が参入しようとする際に、どちらを選択するにしてもメリットにもデメリットにもなりうることであるため、自分の現在の状態に合わせた選択が必要になります。起業家が参入するビジネスでは、通常はお金も不足していることのほうが多いので、支払いが早いビジネス(できるなら前払いビジネス)のほうが望ましいといえるでしょう。

 購買頻度が低く、比較的価格が高い個人向けの商品を販売する場合などでは、「支払方法」が購入決定のための重要な要素となることもあります。たとえば、自動車を販売するような場合に、「分割払い」ができないようなシステムになっている場合には、それだけで潜在的な顧客を逃してしまうということも起こってしまうのです。このように、同じ商品・サービスを販売するにしても、支払い方法だけの違いが「顧客に提示できる価値」の違いになる場合もあるのです。

 そのため、ビジネスプランの作成の際には、比較的一般的な事業で参入するにしても、その販売プロセス・支払方法は顧客の購買決定のプロセスを考慮して、しっかりと行っていくべきことでしょう。

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