市場の分析・セグメント化







 起業家が新しいビジネスに参入するとき、その市場はより詳細に分析されているほうが望ましいといえます。ヒト、カネ、モノなどの様々なリソースが不足している段階での起業家の目指すべき市場は、先にも説明した通り、既存の他者が何らかの事情で参入していない「ニッチ市場」であるほうが一般的にはよいので、より詳細に市場を分析したうえで参入しやすい市場を見極めていくことになります。

 起業家が参入すべき市場を見極めるために市場のセグメント化し分類を試みることになります。市場をセグメントする要素としては、たとえば以下のようなものがあります。

 年齢、性別、人種、国籍(起源)、家族構成、地域、気候条件、職業、学歴、所得、趣味嗜好 等

アメリカでは、マーケットをセグメント化して、適切に分析することが非常に重要視されます。なぜなら、アメリカには、本当に多種多様な人種、国籍の人がいて、また、国土も広大で、場所によって気候条件なども非常に違い、それによるライフスタイルの違いが大きいため、それらを適切に分類して、ターゲットを決めておかないとビジネスが成立しにくいからです。

 日本国内で日本人向けの商品・サービスで起業を考えている場合には、セグメント分析の中で「人種」や「国籍」といった要素は全く考慮しなくてもよい場合が多くなります。また、国土も比較的狭いため、気候条件などもあまり考慮しなくてもよい要素となりやすいでしょう。

 「マーケットをセグメントできる要素が少ない」、ということは、必ずしも起業家にとってよいことではありません。なぜなら、対象となる顧客が似たような属性の人ばかりで、趣味嗜好や考え方、行動パターンが似通った人たちばかりの市場では、そこに参入している競合どうしでの熾烈なシェア争いとなり、結果として価格競争に陥って、収益性の低いビジネスになってしまいやすいからです。そのような市場では、経営的な体力の強い大手企業の「独り勝ち」となりやすく、リソースが不足しがちな新興の起業家では太刀打ちできないことのほうが多いのです。

 そのため、起業家としては、マーケットを詳細にセグメント化しやすい市場の、既存の他者が何らかの理由で参入していないようなセグメントで、「自分であれば(小規模な起業家のほうが)参入しやすい」市場を探すほうが、収益性が高く、かつマーケティング費用が少なくて済むスタートアップに成功する確率が高くなります。

 プライマリーリサーチを行う際にも、ここでセグメント化した対象顧客の中で、もっとも自分の提供する商品にフィットすると思われる顧客に対して優先順位を付けておくと、効率的に調査できるようになります。

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営業方法・顧客の購買決定プロセス等の特徴






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