商品・サービス(提供する価値)の定義~これがなければ始まらない







 新規にビジネスを始める時、最初に定義しなければならないものは、自分が起業家として「どんな商品・サービス商品を提供するか」ということです。これがない場合には、ビジネスがスタートできません。そのため、まずそれを定義していくことになります。

 日本でもアメリカでも「起業したいなあ」という漠然とした思いを持った人はいつでもたくさんいるのですが、起業したいのに「自分が何を提供して起業するのか?」ということを全く考えていないことも多いようです。そのような状態をいつまでも続けていたとしても起業は絶対に成功できません。起業してビジネスとして成立するためには、まず、提供する商品・サービスを決め、そして顧客を獲得することが絶対条件ですので、本当に起業したいのであれば、自分がどのような価値を顧客に提供することができるのかを常に考えておくべきでしょう。

 起業家がビジネスをスタートする際、一般的には商品(プロダクト)販売のみによるスタートは金銭的なリスクが大きくなります。なぜなら、商品を販売するためには、通常はある程度の在庫や、生産設備を確保してから始めなければならないからです。実績をもとに販売量が予測できる既存事業とは違い、起業直後にはどれくらいの販売量が見込めるかの予測は非常に難しいものです。そのため、もし予測が大幅に外れた場合の損失がきわめて重大になりますので、とれるリスクがどこまでかをしっかりと見極める必要があります。

 起業する場合には、商品販売をメインとしたビジネスアイデアで始める場合でも、できるだけリスクの少ないサービスを絡めた形でのビジネスを考えたほうがよいとはいえるでしょう。

 ただし、専門性が高い(報酬の高い)サービスのみで起業を行う場合には、その後の展開に関して注意が必要になります。なぜなら、専門性の高いサービスというのは、先に述べたように「アントレプレナー的プロセス」には進みにくく、「専門職的なプロセス」にはまり込みやすいからです。起業家自身の選択として、「事業」と「自分自身」が一体化した「専門職的なプロセス」でずっと続けていくのだ、と決めている場合にはそれでも構わないわけですが、その場合には事業は売却できる状態にはなりにくく、それほど他人を意識したビジネスプランを書く必要もありませんので、せっかくビジネスプランを書くのであれば、できるだけ「アントレプレナー的なプロセス」を意識すべきでしょう。

 商品の販売・サービスの提供のどちらでビジネスをスタートさせるにしても、その「提供される価値」は、できるだけわかりやすく定義されている必要があります。技術的な専門性が高い人(頭のよい人たち)が書くビジネスプランでは、この部分が学術学会の論文のタイトルのようにきわめて難解に書かれてしまっているケースが多くなります。顧客は難解で自分にどんなメリットがあるかが分からないようなものに対してお金を払うことはほとんどありません。そのため、ここで定義される商品・サービスはできるだけ多くの人たちにその価値が伝わるように記述されている必要があるのです。伝わらない場合には、悪いのは伝わるように説明をしていない起業家自身ということになります。

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