未来志向の起業家のビジネスプラン







 「ビジネスプラン」や「事業計画書」といった類のものは、起業家だけが作るものではなく、むしろ既存の大企業などで、より頻繁に作成されるものです。ただし、起業家が作成するビジネスプランと既存の大企業などで作成されるビジネスプランでは、記載される順番、重視する項目が少し違ってきます。

 大企業の経営企画室などで作成される事業計画とは、前年の売り上げ等を基にして今期に期待できる売り上げなどを予測して、事業計画を立てていくことになります。扱っている製品・サービス等も既知のものであるという前提を持って進められることになりやすく、その意味では「過去からの延長線上」で事業の計画を立てていくことになります。先にあげた大項目の中では、後半に記載した事柄のほうが先に記載されることが多くなります。

 これに対して、起業の際に作成するビジネスプランでは、多くの場合には「過去の蓄積」というのがほぼ全くない状況(最初の時点では「ヒト、カネ、モノ」などが全くない状況)から、未来を志向したプランを作成することになります。大企業など既存の企業内では、「企画書」と呼ばれるものと性質が近いものといえるでしょう。

 「起業家は未来志向で考える」といっても、実現性が低い絵空事のようなプランで物事を進めてもよいというわけではありません。ベンチャーキャピタルなどの新規事業のスタートアップのための投資業務を行った経験のある人などの多くのコメントによれば、投資を求める起業家が提出するビジネスプランの多くが、全く現実的な実行可能性(フィージビリティ)を検証していないものばかりで、そういった実効性のないプランを排除することが仕事量のうちの多くを占めてしまうそうです。

 何度も繰り返しになりますが、ビジネスを開始するためには、「顧客がいること」が絶対に必要で、「顧客がいること」についての明確な根拠がビジネスプランには必要になります。投資家などに資金の提供を求めるような場合には、このことがより重要になります。

 そのため、起業家が作成するビジネスプランをよりしっかりとしたものにするためには、先に述べた大項目のうちの前半の部分である

・ビジネスコンセプト(商品・サービスの説明)
・業界・マーケット分析
・顧客獲得方法・マーケティング戦略

が特にしっかりと考えられていて、すぐにでも実行可能な状態になっていることが望ましいことといえます。

 起業家が作成するビジネスプランでは、既存の企業などと比べれば未来志向のビジネスプランを作っていくことになりますが、反面、過去からの蓄積が少ない分、そのプランが実現しようとする未来への根拠には、非常に強い理由が求められることを理解しておく必要はあるでしょう。

次ページ
何のためにビジネスプランを描くのか?






次ページ
何のためにビジネスプランを描くのか?

起業関連本