出口計画(Exit Plan)







 起業家が事業を始める時、ほとんどの場合には未来が正確には予測できない(ビジネスが立ち上がるかどうかも分からない)状況で「目の前のやらなければならないこと」を限られたリソースで行っていかなければならないことのほうが多くなります。そのため、事業がうまく立ち上がった際に、最終的にどのような状態を目指すのか、ということまでなかなか具体的に考えることができないものです。

 しかし、「目の前のやらなければならないこと」に集中しすぎると、それを繰り返すだけが生活の中心となり、その起業家にとって「どんな状態が理想的な状態なのか」ということ自体が判然としない状況となりやすくなります。

 アメリカの起業家研修においては、ビジネスプランに記載すべき項目の中に「出口戦略(Exit Plan)」という項目がほとんどの場合はいっています。

 これまでに何度か説明してきたとおり、アメリカでは事業を始める目的を「事業自体を売却できる状態にすること」に置くことが多くなります。自分自身が始めたビジネス(自分自身がビジネスをしている状態)から、その事業をどう成長させ、最終的に自分がどのように抜け出す(Exitする)か?ということの最終的なイメージをして、その状態に向けて進むほうが、ビジネスの方向性が定まりやすく、事業に対してのモチベーションも高めやすくなります。そのための計画が「出口計画(Exit Plan)」となります。

 起業家が事業の将来的な目標を考えるとき、それを「株式公開(IPO)」「上場」としていることもあります。「株式を公開する」ということは、「市場での資金調達が容易になる」「創業者利益を得やすい」など、さまざまなメリットが発生します。反面「お金を出せばだれでも株主になれる」ということになりますので、起業家の意向とは関係なく株を買った人に株主総会の議決権を渡すことになり、起業家自身の自由な事業運営などが難しくなるなどのデメリットがあります。そのため、事業が大きく発展した「売却できる状態」であっても、「株式を上場する」という選択を行わず、非上場のまま会社の運営を行っている会社も多くなります。

 行っている事業が、大規模な設備投資などが必要でスケールメリットが出やすいような事業の場合には、小規模な事業体として単独で存在するよりも、既存の大企業の傘下に入って事業を行うほうが、安定的な運営が期待できる場合などもあります。その場合には、出口戦略として、「大企業に吸収合併(M&A)をしてもらう」、という選択が最適な場合もあります。

 出口戦略として、「株式公開」や「吸収合併」を目指すということでなくても、「経営は信頼できる人に任せて、自分は研究開発に注力する」「100%の株式を親類(子供)に譲渡する」などという起業家自身の考え方にあったプランを立てることは可能ですが、そのような状態にするためにも、事業をシステム化して、「売却できる状態」にまで発展させるということが重要な考え方となります。そのため、起業家は「事業を始める前から」その出口戦略を考えておいたほうがよいといえるでしょう。

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ビジネスを始めれば必ず困難や危機がある






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