再度、「本当に起業がしたいのか?」「アントレプレナー志向なのか?」







 ある人が「起業をする!! 」という決断をするとき、その決断はその人の人生そのものに関わる大きな決断であることがほとんどです。そのため、起業をする際には、その決断が本当に自分にとって適切な決断であるかということを再度考える必要があります。

 事業は、「顧客がいること」がスタートさせるための絶対条件で、顧客に対して、何かしらの「価値を提供し続けながら、お金を受け取り続ける」ことができて継続していくことができるものです。そのため、起業することの動機が「顧客(社会)に対して価値を提供する」ことに対しての強い動機付けがない場合には、失敗しやすくなります。

 たとえば、サラリーマンとして生活をしていて、会社に対しての「人間関係」や「収入」などに不満を持っている人が「起業したい」と考えることがあります。しかし、これは正確には「自分の不満を解消したい」のであって、「起業したい」のではありません。「自分の不満を解消する」のに「起業する」という手段をとる必要はないのです。

 このような動機で起業する場合には、「顧客(社会)に対してどんな価値を提供するのか?」ということが全く考えられていないことも多くなり、往々にしてうまくいかないものとなります。このような状態であれば、むしろ「起業する」という行為自体を控えたほうがよいといえるでしょう。
 
 「起業する」に当たって、「顧客(社会)に価値を提供する」ことに対しての強い動機付けがある場合にも、「自分が起業する」という形態をとる必要がない場合があります。特に、自分自身に高い専門性があり、どちらかと言えば「専門職的なプロセス」で起業を行いたいと考えている場合がそれに当たります。ある人が「起業する」と、様々なこまごまとした事務作業が発生するものですし、発生するトラブルをすべて自分の責任で処理していく必要があります。「専門職的なプロセス」で自分が仕事を行いながら「顧客(社会)に価値を提供する」という動機が強い場合に、そのようなことを行っている会社に従業員として参加するなどすることのほうが、より自分が好きな専門的な事柄に集中することができますし、安全に事業を行うことができることができることも多いのです。

 起業して、「専門職的なプロセス」で事業を行っていくのも、「アントレプレナー的なプロセス」で事業を行っていくのも、どちらも「顧客(社会)に価値を提供する」ということを行っている限りは、正しい起業(ビジネス・スタートアップ)方法です。そして、どちらを選ぶか、というのは、起業家自身が選択することです。ただ、ある人に「起業したい!! 起業する!! 」という感情が湧き上がっているとき、その目的が近視眼的である場合が多くなります。そのため、どのプロセスで事業を行っていくうえでも目的を明確化し、事前に適切にプランニングを行っていくべきといえます。

 次の章では、起業家のためのビジネスプラン作成のためのガイドラインを考えていくこととします。

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ビジネスプランに含むべき内容






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