起業して「自由意思」で行動できるようになるために







ある人が「起業する」という場合に、その目的は様々ですが、ある人がこれまで勤めていた会社を辞め、起業するという決断をするとき、その動機として「自由な人生を送りたい」というような場合も多くあります。特に日本の大企業などでは「年功序列で若い人の意思が全く反映されにくいシステム」や「自由に休みがとりにくい風土」などが強いため、起業の動機に「自由」を求める人の割合も多いでしょう。

しかし、「起業」をしたからといって、すぐに真の意味で「自分の自由意思」で、すべての物事を決定して行動ができるようになるわけではありません。

「起業」をして、会社の「オーナー兼経営者」という状態で事業を始めたとしても、行っている事業の顧客が少なく自分の事業所得のほとんどを少数の顧客に依存してしまっている状況の場合には、どうしても顧客には従属的な関係を強いられやすくなります。

また、自分自身が「専門職的なプロセス」で仕事を行っている場合には、自分が働き続けることで収入も多くなることになります。そのため「自分の時間」をお金に換えるような形となりやすく、そのトレードオフとして、「自分の自由」を奪われていくことになりやすくなります。

自分自身は「オーナー兼経営者」というような形で存在し、十分な数の顧客がいて事業が回っているような場合でも、きわめてサービス提供能力の高い社員(スタープレイヤー)による属人的な処理能力に依存していて、その社員が何らかの事情でいなくなると、急にサービスの質が低下してしまうような場合にも、「スタープレイヤー」に主導権を握られてしまっている状態です。

自分のビジネスを少数の仕入れ先からの仕入れのみで成立させてしまっているような場合にも、仕入れ先から条件を変えられてしまうことで危機に陥ってしまうことになります。

誰かに出資をしてもらい、「経営者」として事業を開始し、その結果、事業がうまく回り始めたとしても、自分の株式の保有比率が半分以下の場合には、完全な自由意思での経営が行えるようになるわけではありません。

このように、起業し事業を進めていく場合に、「顧客」「従業員」「取引先」「株主」など、さまざまな要因が複雑に絡み合いながら、起業家自身の「自由」が制限されるようになります。

起業家が起業をして、真の意味で「自由」に会社を運営できるようになるためにも、「株主」として事業を保有し、顧客獲得のための継続的な努力を行い、その上で「アントレプレナー的なプロセス」で事業の様々な部分をシステム化(属人的な部分を少なく)しながら、いつでも売却可能な状態を目指していくほうが望ましいといえるでしょう。

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「事業=自分」から組織化していく「アントレプレナー的プロセス」






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