ビジネス・スタートアップに成功してから







 ビジネスをスタートするためには、「顧客がいること」が絶対に必要で、逆に顧客がいれば何とかビジネスをスタートすることができます。前の章で説明したとおり、アメリカの起業家研修においては、「ビジネスをスタートする」ための絶対に必要である「客がいるか?」ということについての確認(フィージビリティスタディ)や、顧客や投資家に出会ったときに効果的に分かりやすく説明するための練習(エレベーターピッチのトレーニング)などを行うことが多くなります。アメリカでも、「ビジネス・スタートアップ研修」というような意味合いで、一日で終わるようなものであれば、前章でやったような内容だけをインタラクティブに行っただけで終わりになることも多くなります。

 スタートアップの段階から顧客の獲得に成功し、「顧客に何らかの価値を提供」して、その対価として「お金」を受け取り、十分な利益を上げることができるようになったとします。「顧客に何らかの価値を提供する」という崇高な理念を掲げて、それが顧客に評価されて十分な利益が受け取れるようになったとした場合にも、その方向性は、大きく2つの方向性にわかれることになります。それは、

「専門職的なプロセス」
「アントレプレナー(事業家)的なプロセス」

の2つです。

 「専門職的なプロセス」とは、ビジネス・スタートアップした人によって、属人的に顧客に何らかの価値が提供されるタイプのビジネスです。「調理師の技能を持った人が飲食店を行う」「服飾デザイナーが衣料品店を開店する」「建築家が設計事務所を開く」「医師の資格を持った人が、開業する」「弁護士資格を持った人が事務所を開業する」というような場合です。

 このような場合は、「顧客に対して提供される価値」は、「ビジネスをスタートした人」そのものから提供されることが多くなります。「提供される価値」が、どちらかといえば、それを提供している個人に依存していますので、その価値を創出する人がいなくなったり、人が変わったりすると、提供される価値が変化したりすることになります。世の中のスモールビジネスの多くは、日米を問わずこういった形態となっています。

 「アントレプレナー的なプロセス」とは、「専門職的なプロセス」を経て、ビジネス・スタートアップに成功したとしても、その後にビジネスをシステム化しながら発展させていくようなプロセスになります。

 「専門職的なプロセス」であっても、「アントレプレナー的なプロセス」であったとしても、顧客に価値を提供して正当な対価を得ている限りは、どちら間違っているわけでもない、正しいビジネス・スタートアップではあるのですが、アメリカで「Entrepreneurial Study(アントレプレナー研修)」というような場合には、どちらかといえば、後者の「アントレプレナー的なプロセス」を推奨していくことになります。
 

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Consulting is not entrepreneurial!!(コンサルティングはアントレプレナー的ではない!!)






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