ある人が、ほとんど何もない状態からビジネスを始めようとするとき、その動機や目的は様々です。ただ、ある人が起業をする際、その目的が、一義的に
「お金を得ること」
になっていることが多くあります。
しかし、これはあまりよいことではありません。なぜなら、「お金を得ること」、だけを目的とするのであれば、自分で事業をはじめる(起業する)必要がないからです。
「お金を得ること」だけが目的の場合、投資・投機などもっと直接的な手段がたくさんあります。また、「生活するに十分なお金を稼ぐ」ことを目的としている場合には、自分で事業を始めるのではなく、どこか安定的な雇用を提供してくれる会社を探し、そこに雇用されることで、その目的は達成されるのです。むしろそのほうが、自分の責任でビジネスを始めるよりも、より安全で確実な方法となります。
事業を自分で行う場合に、「お金」とは「顧客からのみ」もたらされるものです。そして、顧客がお金を払うのは、「何らかの価値」を顧客に提供しているからです。そのため、起業する際の目的は、最初に、「顧客(社会)に対しての価値の提供」があり、その結果として得られる「お金」を最大化するということを目的としなければならないのです。
このように、「起業」をする際に、「お金」を一義的な目的とはしてはいけないのですが、他方、目的の中には「お金(利益)」は、絶対に含んでおかなければなりません。なぜなら、その目的に「お金(利益)」が含まれない場合、ビジネスではないからです。
社会的に意義深いと思われるようなことを行いたいと考えている場合、「社会的な評価は高くても」「利益となりにくい」事柄も多くあります。その場合も、「起業」という形態は取らないほうがよい場合があります。たとえば、「地域のボランティア」や「CSR活動」を行いたいと考えている場合などでは、「お金」という尺度での目的達成(利益創出)が難しくなります。このようなことを行いたい場合は、起業という形態をとらず、公益法人や大企業の社会貢献部などに企画を持ち込むというような形のほうが、さまざまなサポートを得て目的が達成されやすいことも多いのです。
アメリカや日本のような先進国においては、最低限の人間的な生活をしていくためには、「お金」というものが絶対に無視できないものですから、ビジネスを行う場合には、「社会に対しての価値の提供」というような理念だけではなく、当然ながら、「お金(利益)」を継続的に得ていくということを、最低限の目標としていく必要もあります。
このように、「起業」の目的には、「社会に対して何らかの価値を提供する」という理想がまずあって、かつ、その結果として得られる「お金」も目的として含む必要があります。その意味では、起業家は崇高な理念を掲げつつ行動しながらも、「お金」という、きわめてリアリティの高いもの(現実)をしっかりと直視して、稼いでいくということが必要になるのです。