ビジネスをスタートした直後の起業家に対して、多くの人は「懐疑的(Skeptical)」な態度をとり、既存の他者と同様な営業活動を行っていたのでは、顧客を獲得することはできません。一方、ビジネスをスタートした直後の起業家は、ほとんどの場合には「ヒト、カネ、モノ」などすべてのリソースが不足しており、その状態から効率的に顧客を獲得していくことによってビジネスを軌道に乗せていく必要があります。
初期の段階で顧客が少ない状態では、どうしても短期的な「顧客を獲得したい」「利益を確保したい」という思いが働くため、
「見込み客を集めるため、なりふり構わない手段で営業をかける」
「たまたま問い合わせをしてきた客に対してしつこく営業する」
などといった行動をとりがちです。しかし、できることならそういったことは避けるべき手段です。
なぜなら、「信用が低い状態」での「なりふり構わない手段」や「しつこい営業」は、もともと懐疑的な顧客が多い段階では、「信用のマイナス」を拡大しやすいからです。
先に議論したとおり、ビジネスをする上での理想的な顧客とは、
「ありがとう」と言いながら(こちらに感謝したり喜んだりしながら)、利益のでる金額を何度も支払ってくれる顧客=(固定客・信者客)
ですが、「なりふり構わない手段」や「しつこい営業」で顧客が獲得できたとしても、こういった理想的な顧客にはなりにくいものです。ビジネスとは、信用を積み重ねながら、正当な対価を交換することで成立するものですが、最初の段階から信用度の低い行為を行うと、それ以後の信用の積み重ねが非常に困難になってしまうことになります。顧客が固定客へと発展せず、信用度の低い顧客を常に集めなければならない場合、ビジネスとしては安定的に成立しにくくなります。
また、顧客が少なく、利益が出ていない初期の段階で、しつこく営業をするなどしてしまうと、こちらの苦しい状態の足元を見られるような形で、従属的な関係を強いられることがあります。先に議論したとおり、最初の段階で少数の顧客との従属的な関係が成立してしまうと、後にその関係を改善していくのは非常に難しくなってしまいます。これも、ビジネスを行う上でのリスクとなってしまいます。
長期的に安定したビジネスを展開するためには、きわめて「懐疑的」にみられる段階から、最終的に「固定客」になってもらえるような方法を、「最初から」考えて、実行していく必要があります。ビジネス・スタートアップに成功するためには、顧客が絶対に必要ですが、本質的な部分では、効率的な「信用の蓄積」を最優先させていくというのが、きわめて重要になります。