多くのマーケティングの教科書や本においては、顧客は
「見込み客」
「購入顧客」
「リピーター」
「固定客」「信者客」
というように発展するような記述がなされています。顧客の状態がこのように進化していくためには「顧客からの信用の積み上げ」が必要になります。
しかし、ビジネス・スタートアップ直後の起業家の場合、「見込み客(Perspective)」からのスタートではなく、さらに信用が低い状態である「懐疑客(Skeptical)」からのスタートになります。
MBA (Master of Business Administration)の教科書などは、その名の通り「経営管理」の学問ですから、どちらかといえば、「すでにビジネスがすでに回っている大企業」などを対象にしています。そのため、その会社に対して認知度がすでにあったりして、懐疑的な態度をとる人が少ないのです。起業をして全く顧客のいない状態から始める場合には、懐疑的な人々の心理的な警戒心を外しながら、 見込み客を獲得していくことになります。
新規にビジネスを始める起業家は、既存企業と比べればマイナスなところからスタートしなければならないわけですが、多くの場合、これはそれほど大きなハンディキャップとはなりません。なぜなら、「懐疑客」と「見込み客」は、どちらともまだ購入していない顧客であって、心理的な違いでしかないので、適切な説明がなされれば、状態が変わりやすいからです。
「認知度がない」「小規模である」というような理由で、顧客が獲得できないのは、多くの場合、既存企業や大手企業などの「他の企業と同じかそれ以下のこと」を何も考えずに行おうとしているからです。顧客の心理的な信用度に差がある状態で、既存の他者と同じことを行ってしまうと、当然最初から信用のあるところから購入することになります。
起業家が提供する商品・サービスを顧客が「ほしい」「必要」と考えているとき、適切なタイミングで現れ、懐疑的な顧客に対しての懐疑的な気持ちを取り除く方法(信用を上げるための説明)を考えておくことで、既存企業よりも小回りが効きやすいスタートアップ企業では、むしろ付加価値の高いサービスを提供することもできることが多くなります。
知名度が低い場合の「懐疑心」を取り除く方法としては、これまで説明してきた、「エレベーターピッチ」もそのための強力な道具の一つとなります。また、すでに信用を得ている人などからの紹介(著名人、マスコミなど)、既存客からの口コミなどがあります。最近では、ネットでの口コミサイトなども増えていますので、そういったサイトで自分の信用を獲得してから、顧客を獲得していく方法なども本格化しています。
新規に起業する人は、最初の状態がきわめて「信用の低い状態」でスタートしていることを認識して、それに対応した適切な活動が必要となるのです。