「最初の客」がきわめて重要







 アメリカの起業家教育では、最初の段階で

「ビジネスアイデアの確認」
「エレベーターピッチのトレーニング」
「フィージビリティ(実行可能性)の確認」

というようなことを行うのですが、その後、実際にビジネスを始めたとき、「本当に最初にお金を払ってくれた顧客」が非常に重要になります。

 なぜなら、ビジネスのスタートアップでは、いくら事前に綿密な計画を立てようとも、顧客が獲得できたとき、「本当にお金を払ってくれる顧客」が事前に想定していたような対象と違うということが多いからです。そして、「最初にお金を払ってくれた顧客」がその後のビジネスの方向性に大きく影響力を及ぼすことになるからです。ビジネスは常に「お金を払ってくれる顧客」がいる方向に向かって進みます。

 「起業したい」という情熱に燃えて、「自分のやりたいこと」を中心に計画を考えて、起業したとき、「自分のやりたいこと」「顧客のやってほしいこと」と合致しないことが多くなります。そういった場合、「自分のやりたいこと」がうまくいく前提の計画は、全く収益性の高いビジネスではないので全く役に立ちません。逆に、収益性の高い「顧客のやってほしいこと」は事前に計画していたものでは全くないので、常に顧客の要望に向けて「計画もなく」進展していくこといなります。

 ビジネスのスタートアップの準備段階で、エレベーターピッチに含む文言に絶対に「安い」という言葉をいれてはいけないのは、この「最初にお金を払ってくれる顧客」に非常に大きく影響するからです。顧客があなたの商品・サービスを単に「安い」という理由だけで購入を決定したとき、その基準は将来変わることはなく、あなたが「安い」ことを求め続けるからです。

 顧客によっては、スタートアップ直後であることの足元を見て「最初に安くしてくれたら、今後もなにかあるかもしれないから」ということを交渉の材料にすることもあるかもしれませんが、ほとんどの場合、それは安くするための方便です。(仮の念書のようなものを書くことを求めても、絶対にサインすることはないでしょう。)

 最初に獲得した顧客が「安い客」で、自分自身は「安い人」として奉仕してしまうと、その後もずっと収益性の低いビジネスを回さなければならなくなりがちです。その状態が継続してしまうと、ビジネスの進展性が極めて低くなってしまうのです。

 そのため、ビジネスを始める前の段階で、「理想的な顧客像」というのを明確にしておくことがきわめて大事なことになります。特に、ビジネスをスタートする前に立てた計画の「自分のやりたいこと」とは違う「顧客のやってほしいこと」が提示された場合が、特に重要です。なぜなら、ビジネスでは「顧客がやってほしいこと」のほうが、圧倒的に将来性が高いものだからです。もし「良い顧客」から「やってほしいこと」が提示された場合には、そのビジネスをどのように進めるかの計画をしっかり立てていくことが自分のビジネスを発展させる大きなチャンスとなります。逆に「安い客」はいくら売上がほしくても「請けない」という選択もする必要があるのです。

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「理想的な顧客」とはどのような顧客か?






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