日本では同窓会ピッチ?







 「エレベーターピッチ」が日本の国内での起業家研修ではほとんど行われない、という背景には、日本人がそもそも

「見知らぬ人とエレベーターの中で話すことなどありえない」
「交流パーティなどで初対面の人とそれほど親しく話すことがない」

等といったことが考えられます。

 それでも、起業家は顧客もいない状況から、(元々は他人である)新規顧客を効果的に獲得していかなければ事業にならないわけですから、そういったトレーニングはやはり行っておいたほうがよいでしょう。

 筆者は、日本人の場合には、コンパクトに事業アイデアを説明する母集団として
「同窓会で何の気なしに何年もあっていなかった人に話す」
ということを想定してみることを推奨しています。

 日本人は、全然知らない人や外国人のような「よそ者」に対しては極めて警戒した冷淡な態度をとる人であったとしても、相手が「同窓生」であったり、もっとざっくりと「同郷人」であったりするだけで心を許し、いろんなことを話せるようになる場合が多いものです。

 そのため、そういう人たちに対して、「エレベーターピッチ」ならぬ「同窓会ピッチ」のようなものを行った場合に、それが何らかの形で通用するか?ということを確認してみるとそのプレゼンテーションが、どれほど完成度が高いかということが確認できるでしょう。

一般的には、同窓会では「基本的には他人」ではあるものの、自分に対しての相手の心理的なハードルが低く、多少プレゼンの内容が長くても許容されるという、プレゼンのトライアルとしては、かなり理想的な状況であるということはいえるでしょう。こういった人たちを相手にして、プレゼンテーション等を行ってみた場合でも、全く手ごたえがないような場合には、それはビジネスアイデアのブラッシュアップ(磨き上げ)が足りないと判断されます。

 また、同窓会に出席している人に対してプレゼンを推奨するのには、もう一つ理由があります。それは、自分が行おうとしているビジネスが、「まっとうなビジネスか?」ということを内省することができるからです。通常、同窓会というのは「何年かに一回」というように定期的に行われているものです。同窓生にそのビジネスの話をした時に、「次の同窓会にも堂々と出ていけるか?」ということは、行うビジネスの最低限のモラルの有無にも関わるからです。昨今の副業ブームや拝金主義的な風潮によって、「新しいビジネス」を始める際、その内容的に、同窓生に顔向けができないビジネスというのも非常に多くなっています。近視眼的な儲けのために、顧客を犠牲にするビジネスというのは、絶対に長続きしないビジネスです。良好な人間関係が長期的に維持できるビジネスかどうかということをスタートアップの時点から考えておくことは非常に重要なことなのです。

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エレベーターピッチの新潮流 ~ ネット動画での公開






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