アメリカの起業家研修においては、起業する人は「エレベーターピッチ」は絶対に「用意しなければならない」と位置付けられています。
これまでも説明したとおり、ビジネスをスタートするにあたって絶対に必要なのは「顧客」です。そして、起業直後の起業家は通常「ヒト、カネ、モノ」のすべてが十分にない状態でビジネスをスタートさせることになります。そういった制限された環境の中で、できるだけ予算・コストをかけずに自分自身のプレゼンスを上げ、プレゼンスをあげた結果接触できた潜在顧客に対して、「わかりやすく伝わること」を用意しておかなければ、実際に購買してくれる顧客を獲得することはできないのです。
「エレベーターピッチ」には、こういった要素のすべてが、含まれるといってよいでしょう。
ある人が、これからは自分で何かをやっていくことを決め、「起業する」という選択をしたとします。そうであるならば、起業家たるもの「いついかなる時でも」自分が提供している商品・サービスについて、きわめてわかりやすく説明ができるようでなければなりません。また、チャンスというのは、いつどんなところに転がっているものかもわからないものです。突然目の前に訪れたチャンスは必ずつかむように心掛けなければなりません。そのために、「エレベーターピッチ」というのは必ず起業家の中に「常に用意されていなければならない」ものなのです。アメリカでエレベーターの中で見知らぬ人と話すことが多いから、直接的な営業の手段として作るわけではないのです。
直接対面した人に対して自分のプレゼンスを上げるための手段として、日本でよく用いられる「名刺」も、非常に有用な手段とはいえます。しかし、たまたま名刺を切らしてしまっているケースもあるでしょう。そのようなときに、自分の中に「エレベーターピッチ」的なプレゼンテーションの用意をしているか、していないかというのは、そのタイミングで訪れたチャンスを生かせるかどうかにかかわってきてしまうのです。
エレベーターピッチは、顧客向けだけに作るのではなく、顧客以外の様々な人に対して「今現在自分がほしいと思うもの」を適切に伝えるように用意しておくと、より効果的になります。起業直後には、ほとんどの場合、いろんなもの(モノ、カネ、ヒト)が不足しています。モノが不足しているのであれば、友人や仕入れ業者に対して「こういうものがほしい」というのを端的に説明ができるようにしておきます。カネが不足しているのであれば、「こういうビジネスをやっているので投資または融資してくれる人を探している」ことがということを用意します。ヒトを探しているのであれば、「こういう人材を探している」というのを用意しておくことになります。「ヒト、カネ、モノ」の中で、不足しているものに対してエレベーターピッチを作成するということは、今現在自分に何が足りないのかを確認するためにも非常に重要なことなのです。
繰り返しになりますが、起業家にとって「エレベーターピッチ」というのは、「用意されていなければならないもの」なのです。