起業家は、その初期の段階では、「ヒト、カネ、モノ」などの様々なリソースが一般的には不足した状況ですので、新たに市場に参入していくためには、何らかのニッチな分野に特化してビジネスを行っていくということが有効な戦略となります。
しかし、起業家があるニッチな得意分野に特化して事業を行っているということは、逆にいえば「不得意分野」もたくさんあるということになります。起業家がそういった「不得意分野」に対して積極的に参入していこうとする態度も時には必要なことではありますが、リソースが限られた起業家にとっては、すべての場合でそのような戦略をとるわけにはいきません。
高度に知的な専門化が進み始めている近年のビジネス環境においては、ある特定の人や会社が、さまざまな専門知識のすべてを自分で記憶してビジネスに活用していくということが非常に難しくなっています。その反面、専門的な知識や必要な機能だけを提供するビジネスは様々な場所で行われるようになっています。そういったビジネス環境において重要となる考え方が、自社とは得意分野が異なる他者との「提携(アライアンス)」となります。
事業を行う上での提携(アライアンス)関係には様々な関係性がありますが、たとえば以下のようなものがあります。
・個別の仕入れでは高くなるため、いくつかの会社が提携して一括で仕入れを行う
・お互い近い業種で、苦手な技術分野を補いながら技術開発を行う
・全くの異業種だが、顧客サービスのためのポイント制度を統一する
このように、効果的な提携関係を結ぶことで、お互いの得意分野でお互いの不得意分野を補いあいながら有利にビジネスを進めていくことが可能になります。
ビジネスにおける提携は、同業者同士で提携を行おうとする場合には特に、単なる業務提携にとどまらず資本の提携を伴うものであることも多くなります。提携関係が資本提携を伴うような場合には、その先の将来に企業の「吸収」や「合併」というようなことも視野に入れて行われることが多くなります。
事業を行っていく上で、特定の分野に特化した強みを持ってやっていくということも非常に重要なことではありますが、ビジネス環境が変化しやすい状況においては、ある得意分野だけでの展開では、効率が悪すぎたり、リスクが大きすぎたりする場合もあります。そのような場合には、自分自身で単体の事業としてやっていくのではなく、より大きな視野にたった他者との提携関係を模索しながら、ビジネスを行っていくということが重要となります。(もちろん、提携によっては、「全く効果がない」「自社のノウハウが盗まれる」というようなリスクも当然に発生しうるものです。)
起業家は、すべてを自分でやるのではなく、他者との効果的な関係を常に模索しながらビジネスを行っていくべきといえるでしょう。