健康でタフであること、自己管理ができること(休みを取ること)







 起業家は、ビジネスをスタートさせた直後の段階では、「ヒト、カネ、モノ」などのリソースが一般的には少ない状況にあり、さまざまな仕事を自分自身でこなしていかなければならなくなります。また、事業を行っていく中では、いくつもの困難や危機に直面することもあり、非常に難しい決断を迫られることも多くなります。

 そのような環境の中で、適切にビジネスを運営していくためにも、起業家は体力的にも、精神的にも健康でタフであることが必要です。そして、起業家が体力的にも精神的にも健康でタフでいられるかどうか、というのは、起業家自身がどのように事業に関わり自己管理を行っていくかということに左右されます

 起業直後の時期においては、起業家自身が様々なことに対して時間的な拘束をされるなどして、「自分の体を使って」忙しくなるのは、半ばやむをえないことといえます。しかし、起業家(経営者)の本来的な仕事は「頭を使って」仕事をすることです。日常の業務の様々な事柄に自分の体を拘束され、頭を使って考える時間がない状況になってしまうのは、本末転倒といえます。

 日米を問わず、大多数のスモールビジネスにおいては、経営者自身が、経営やビジネスの方向性には「全く頭を使うことなく」、顧客に対しての商品・サービスの提供に関しては「自分の体をフルに使って」専門職的なプロセスによってビジネスを行っています。

 起業家がビジネスをスタートさせた当初の段階から、自分の頭を使わず、体を使って仕事をすることが習慣化してしまうと、その後も半永久的にその状態にとどまってしまうことになります。

 経営やビジネスの方向性について「全く頭を使うことなく」「自分の体はフルに使って」仕事をしている状態であると、事業自体にも計画性がないため、困難や危機に直面する確率も高くなります。そして、起業家は精神的にも体力的にも厳しい状態を何度も繰り返してしまい、結果として、行っているビジネスの質も安定しないことになります。

 顧客に対しての使命感が極めて強い人たちの場合、顧客からの緊急の要望が発生するたびに、「顧客のために」「自分のリソースを犠牲にして」しっかりとしたサービス提供を懸命に行おうとします。特に、日本においては、「滅私奉公」というような言葉もあるため、このような態度が一般的には美徳とされ評価されやすい傾向にあります。

 しかし、事業というのは「顧客のためだけ」にあるものではありません。「株主」「経営者」「従業員」「取引先」などのためにも存在しています。その中心で継続的に存在すべき起業家自身の健康状態が安定しないような仕事の仕方は、本来的な起業家の仕事を怠っているとさえいるのです。

 そのため、起業家は、自分自身の健康管理においても、常に頭を使いながら、時には効果的に休みを取りながら、計画的に健康でタフでいられる状態を維持する必要があります。

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失敗はないと知っていて、あきらめないこと






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